100人の仕事観

【武信稲荷神社】宮司 仲尾宗泰さん

武信稲荷神社は、平安時代初期の859年、都の中心部に創祀された藤原氏ゆかりの神社。

1200年近くもの歴史ある神社の先代宮司だった父の跡を、仲尾宗泰さんが継いだのは2005年のこと。

以来、仲尾さんは、伝統と現代のはざまに立ち、現代に生きる神社の役割を問い続けてきました。

神社をいかに親しみやすい身近な存在にすることができるか―。
それを課題として常に意識する日々であったといいます。

神職者としては、いささかユニークな経歴をもつ仲尾さん。

20歳の頃に神主の資格を取得したものの、すぐには神社の世界に入らず、「色んなもん見てみたい、やってみたい」と一般企業に就職。
物流関係の新規事業立ち上げに携わるなど、10年間のキャリアを積みました。

仲尾さんの著書『神主ライフ!―神様に好かれる秘訣、教えます』(徳間書店、2010年)
必読です!

サラリーマン時代に培ったビジネスセンスや時代感覚が、のちに宮司として神社を運営する上で、大いに役立ったと仲尾さんは振り返ります。

パソコンスキルを駆使して早くからインターネットを活用してきたことに加え、書籍の出版、全国放送のテレビ番組への出演を通じて知名度が一気に上昇。

神道の世界観を分かりやすく親しみやすい語り口で説く仲尾さんの言葉に、多くの人々が共鳴し、人気を呼んでいます。

仲尾さんが宮司を務めるようになってから、武信稲荷神社の参拝者は2~3倍に増加したのだとか。

また、古くから神社で行っている「命名・名付け」は、これまでは京都の方だけだったものが今や日本全国から依頼が殺到し、その数は年間700~800件にも及ぶそうです。

神様や神社のことをもっと知りたい、もっと身近に感じたい、という人々の想いに、一番近くから応えようとしてきた仲尾さんの活動は、まさに、現代の新しい神主像を切り拓くものであるに違いありません。

そんな仲尾さんの仕事観とは?

武信稲荷神社は、859年、延命院(医療施設)および勧学院(学問所)の守護神をお祀りする神社として、右大臣左近衛大将 藤原良相によって創祀されました。

仕事とは、神様を真似する貴い行為

―宮司さんの場合、「仕事」とはどういう位置づけになるんでしょうか?

仲尾さん
 神社の用事と私の仕事っていうのは、似て非なるものっていうところもあるのかな、と思います。
 例えば、毎朝、神様にお供え、日供をするところから一日始まりますし、きれいに境内をお掃除したりとか、朝のご挨拶するところからやっていきますけども、これは神様へのご奉仕なので、ちょっと仕事ではないよなって思うところありますね。
 で、一方、命名とか名付けとかは仕事なのかなっていう区切りが私の中であるんですよね。
 だから宮司としてやっていることは色々ありますけども、神様に対するご奉仕であって仕事ではないよなっていうことと、人間なんで生きていくためには生計立てていかなあかんので、生業。そこの部分では切り分けがありますね。

―仲尾さんにとって「仕事」とは?

仲尾さん
 私の仕事観ですけど、神道の仕事観にすごく通ずると思うんです。日本古来の、古代の人の感覚では、神様が行っていることをまねることが我々のする仕事なんですね。だから仕事をするっていうことは、神々がされる行為を真似することなので非常に貴いことであり、自分自身を高めることであるっていうのが神道の仕事観なんですよね。神道っていうのは、日本で自然発生した価値観というか、茶道とか武道とかのように「道」なんですけれども、その中での仕事に対する捉えかたというのが、そうなんです。

―神様がしていることとは、具体的にはどんなことなんですか?

仲尾さん
 たとえば、神話の中でいけば、天照大神は機織りとかを天界でされてたりしていると。機を織ることによって、自分たちが着るものを作られる。それを人間も真似して、昔は自分らが着るものを自ら作る。そういうことであったりとか。
 農作物を作ることもされている、漁をされることもある、踊りを踊る、ものを運ぶ、学問を教える、モノづくり、作詞する、歌をうたう等、我々人間がしていることのほぼすべては神々がやってることなんだっていうことなんですね。人間と同じことを基本的にはされていると。
 家を建てるときに地鎮祭しますよね。その時にお呼びするのが、建築に関わる神様だったりとか、モノを作る神様だったりするわけなんです。人間のすることは大抵神様のしていることであり、お祭りのときにはそれが得意な神様に祈願するんですね。

―日本の神話に出て来る神様は、とても人間的な感じがしますね。

仲尾さん
 まさにそうなんですよ。日本の神道、日本人の古来の考え方っていうのは、人間と神様の間に区別がないんですよね。神様の延長線上に人間がいる。ここは海外の宗教との大きな違いで、キリスト教とかイスラム教にしてもそうですけどね、絶対的な神様がおられて人間を作られたと。ここには絶対に超えることがない一線があるんですけど、日本はこれがないんですよね。

武信稲荷神社の御本殿

神様と人の間をとりもつ喜び

―仕事をしていて、やりがいを感じるのはどんな時ですか?

仲尾さん
 そうですね、神様と人をつなぐ、なかとりもちをするっていうのが神主の役割ですので、たとえば、お参りに来られました、ご祈祷しました、となったときに、清々しい気持ちになって帰れましたっていう声を聴けたりとか、後日、お蔭さまでこうこうなりましたって御礼のお参りに来られてお話を聞いたとき、非常に嬉しいです。神様とこの人との間をとりもてて良かったなって思う時ですね。

効率よりも大切なことがある

―仕事をする中で大切にしているのはどんなことですか?

仲尾さん
 そうですね、今の話の延長なのかもしれませんけども、その方と神様との距離が、近づいてもらえるように、というところを気をつけてます。具体的にはお掃除なんかもそうですよね。やっぱりお掃除が行き届いていなくて非常に汚いなってなると、なかなかそういうことにもなりませんし、けっこうお掃除につきるところがあるかもしれませんね。
 あとは雰囲気とかもそうですよね。効率で考えると、最近は便利なもの沢山あると思うんですけど、人と神様との間をつなぐことを考えたときに、どうなのかなっていうことは考えますね。自分らは不便かもしらへんけども、あえてっていうことはありますね。「神様のもとに来た人ファースト」っていうのかな(笑)。それがどうなのかを考えながらやってますね。

―具体的には、どんなことがありますか?

仲尾さん
 たとえばですね、うちの神社、大きな木がありますから落ち葉がすごいんです。1シーズン、秋に全部落ちますと10トン分ぐらいあるんですね。
 それ、ブロアーなんかでジャーッとやったりすれば速いんです。効率は絶対そっちの方がいい(笑)。いただいたブロアーを使ってみると、ものすごく速いんですよ。で、綺麗になりますしね。作業するんやったら、絶対そっちの方がいいんですけども、神社で神主がやる掃除って、もちろん掃除するっていう作業の目的もありますけど、お清めするっていう意味もあるので、ブロアーでやった時にどうなるかっていうのはあります。
 やっぱりそこは、ほうきとか雑巾とかを使ってやっていく。で、掃除するときに、自分自身の中身もちゃんと綺麗に、こう掃きながら、自分の気持ちとか余計なことをシュッシュッシュッと一緒に落としながらやっていく。これが大事なところですので、効率は圧倒的に悪いですけども、あえてそういう不便を残して、優先的なことを考えながらやったりしますね。ただ、作業としての掃除もしますから、そういうときは遠慮なくブロアー使います(笑)。
 掃除には毎朝だいたい1時間ぐらい、秋になると1時間半から2時間ぐらいかかります。

京都市の天然記念物に指定されている御神木の榎は樹齢約850年。かつて、坂本龍馬が妻のおりょうに宛てた伝言をこの木に刻んだという逸話も残されています。

かなりの時間働いても、つらさはない

―仕事をしていて、つらいと感じるのはどんな時ですか?

仲尾さん
 さっきの話のとおり、日本古来の考え方では、仕事は神々の行為を真似ることであって非常に貴いことであって、それをすることによって自分自身を高める、神に近づく行為なんですよね。私の感覚も非常にそれに近いんです。だから、つらいっていうのは実はあんまりないんですよね。
 一日にけっこう詰まってるので、かなりの時間、労働基準局に怒られるぐらい働いてるんですけど(笑)、別につらさはないんですよね。基本的に好きっていうのもありますし。だから辛さは何ですかって言われると、ちょっと考えてしまうところってありますね。

2013年に折れて落下した御神木の枝は、チェーンソーアート世界チャンピオンの城所ケイジさんの手によって、龍の姿に。腹部にある神紋は、もとから枝にあった模様なのだとか。

地域の人々が、分け隔てなく気軽に集える場所でありたい

―仕事を通じて、どんな方にどんな幸せを届けたいですか?

仲尾さん
 今は「仕事」の半分くらいが赤ちゃんの命名ですが、これから世の中に出ていく人に、希望の持てる良い名前をつけて、幸せな一生を送ってもらえるようにできたらなっていうのがあります。
 あとは、ここに来るすべての人に、来てよかったな、清々しい気分になれたな、と思ってもらいたいです。

―今の世の中では、精神的な支えを求めている人がとても多いと思います。そんな中で、どんな役割を担っていきたいと思われますか?

仲尾さん
 神道が宗教かどうかはちょっと置いとくとして、いわゆる伝統宗教の課題ですよね。仏教にしても神道にしても。現代に合わしきれてないと言うか、受け皿になりきれてないので、ちょっと変なカルトっていうか、それに走る人がけっこう多いですよね。だから日本では宗教と聞くと何か変な、あやしいものというイメージがある。諸外国では宗教がそんなイメージというのはありえないですよね。それは伝統宗教の課題で、早々になんとかせなあかんとこなんやろなっていうのは思います。
 大きい組織になると、色々ありますから、なかなか難しいところもあるんでしょうけど、我々は街の小さな神社で身軽ですから、すその方から変えて行ったらいいなと思うので、自分らの範囲でできることをやっています。
 カチッとした大きな総合病院では最先端医学を研究していて、それしていかへんと発展もせえへんし、それも絶対必要、大事ですけど、いきなりそこ行ったら待ち時間も多いし、なんや分からへんし、ならば、気軽に行ける町医者も絶対必要やし。ちょっと喉痛いんやけど、と、ひゅっと気軽に行ける医者、それも絶対いるし、ここはそういう場所であればいいなと思うので。私ら町医者みたいなものです。

―地域の方々とどんなふうに関わっていかれたいか、何かお考えはありますか?

仲尾さん
 本来の神社っていうのは、地域の肝というか核になるものですしね。人々が、何かあったらここに集まって決めごとしましょう、話し合いの場を持ちましょうとか、お祝いごとがあった時とか、悲しいことの時も、老若男女関係なく集える場所にしたい。目指すのは、やっぱりそういうところです。ここに来れば、日頃は競い合っている人たちでも、それを抜きにして一緒に何かをやれるような関係性ができるようにしたいですね。

願いが叶う一寸法師のお守りと絵馬。武士になるために、お椀の舟と箸の櫂で京にやって来た一寸法師の奉公先が、武信稲荷神社を創祀した藤原良相であったことに由来します。

武信稲荷神社
京都市中京区三条大宮西二筋目下る⇒地図
【アクセス】阪急「大宮駅」から徒歩5分
      JR「二条駅」から徒歩10分
      京都市営地下鉄「二条駅」「二条城前駅」から
       徒歩10分
      京都市バス「みぶ操車場前」から徒歩3分、
       「四条大宮」より徒歩5分、「三条堀川」より徒歩10分
【電話】075-841-3023
【HP】https://takenobuinari.jp/
【Twitter】https://twitter.com/takenobuinari

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