京の起業家・経営者

【すまいの雑貨店 sumao】 店主 浜谷冨美子さん

1902年築の歴史ある京町家で浜谷冨美子さんが営む、すまいの雑貨店sumao。

ここでは、本物の豊かさに出会うことができる。

モノやヒトと長い時間をかけて
丁寧に関わり続けること。
そばにあるものを愛おしみ信頼し抜くこと。
そして、笑顔。

そんな何気ない日常の中にこそ、豊かさの種は宿っている。

sumaoでの出会いは何もかもが新鮮で懐かしく、帰り道にはいつも、足取りが軽やかになっていることに気づく。明日がもっと楽しくなる確かな予感がそうさせるのだろう。

生活雑貨、町家、そして京都

sumaoの店内に並ぶのは、キッチン用品や清掃用品をはじめとする身近な生活雑貨。どれも店主の浜谷さん自身が実際に使ってみて、良さを確信したものばかりだ。

店内に足を踏み入れた瞬間、一つ一つの雑貨の洗練された美しさにまずは目が行くのだが、「愛でるものではなく、ちゃんと使い勝手のよい、よく働くものが好き」だという浜谷さんが選んだ雑貨は、いずれも超実力派ぞろい。美しく、機能的で、さらには長く使えるものである、というのが、ここに並ぶための条件だ。

商品の前で足をとめる客に「それ、いいですよ!」と話しかける浜谷さんは、生き生きと自信に満ちている。浜谷さんの言葉からは、それぞれの雑貨への愛情と信頼とがあふれ出す。

目玉焼きがご馳走になる鉄のフライパン、びっくりするほどフワフワに生姜をおろすことができるおろし器・・・。説明を聞く側としては、商品をすすめられている、というよりは、頼りになる相棒を紹介されているような、そんな感覚だ。

選りすぐりの「相棒」たちは皆、凛として誇らしげに見える。

看板商品であるシュロのほうきやたわしは、浜谷さんが町家に引っ越してきてから使い始めて気に入ったものなのだそう。

これらの雑貨は「古いけど実はすごく機能的に考えられて作られていて」「自分でカスタマイズしながら長く使える」というのが町家と共通する魅力であり、浜谷さんのお眼鏡にかなった理由だ。

日本で古くから使われてきた生活雑貨の隣には、海外から輸入された現代的でスタイリッシュな生活雑貨が並び、心地良い調和を奏でている。

日本のものも外国のものも、古いものも新しいものも、隣り合って一つの美しい世界を作り上げている姿は、多様な文化を受容しながら長い時を刻んできた京都とどこか似ている。

愛する生活雑貨を仕事に

店主の浜谷さんは、商品の仕入れ・陳列から、接客、イベント企画、Webサイト・SNSの運営にいたるまで、全てを一人で行っている。

幼い頃から生活雑貨が大好きで、ファッション雑誌以上に生活雑誌へ強く興味を抱く少女だったという。

生活を構成する「衣」「食」「住」の中でも、とりわけ「住」に対する関心が深く、大学では家政学部で住居学を学びたかったが、進学を希望する大学に家政学部がなかったため、工学部建築学科が一番それに近いと考えて入学した。

その後は建築士としての道へ。大学卒業後はゼネコンに就職し、ビルの設計などを手掛けた。ゼネコンを退社後も、家事や育児と並行して、専門学校で教鞭をとったり、フリーランスとして設計をしたりするなど、建築関係の仕事を続けてきた。

京都に住まい始めてからは、京都市景観・まちづくりセンターに4年間勤務して、町家の調査や相談などに携わった。町家に対する浜谷さんの深い愛情と理解は、建築の専門家としての研ぎ澄まされた知性にも基づいている。

その後、縁あって雑貨店に勤務。専門の建築からいったん離れる仕事であり、当初は後に自分自身が雑貨店を始めることなど想像もしていなかったのだが、これが思いがけず浜谷さんの人生に新しい展開をもたらすことにつながった。

もともと浜谷さんが建築と出会う以前から愛してきたのは、身近な生活雑貨。

雑貨店で、商品の仕入れや接客のノウハウなどを楽しく学ぶうちに思い立った。「これで私の好きなことが実現できるんじゃないか」と。

浜谷さんが夫と息子とともに2005年から暮らしてきた町家は、かつて悉皆業が営まれていたということもあり、通りに面した1階の部屋が店を始めるのにまさに打ってつけの空間だった。その元「ミセの間」を使って、浜谷さん自らがセレクトした生活雑貨店をオープンすることにしたのだ。
【オススメ! sumao公式HPより】「sumaoの町家について

こうして、「住まう場所」と「商う場所」とが融合する町家本来の姿が、浜谷さんの手によって新たな命を吹き込まれ、よみがえることに。

浜谷さん自身にとっても、幼い頃から大好きだった生活雑貨を直接仕事にする好機の到来だった。また、「家にいながら仕事ができる、子どもが『ただいま』って帰ってきたら、お迎えできる」浜谷さんが長年理想としてきたライフスタイルの実現でもあった。

笑顔を循環させる、それが仕事

「住まう場所」と「商う場所」が一体化した、生きた町家であるsumaoに足を踏み入れると、日ごろ私たちがいつの間にか作ってしまっていた色んな垣根が、単なる思い込みにすぎなかったのだと気づかされる。sumaoでは、さまざまな境界線がゆるやかに溶け合っていて、それが何とも温かく心地良い。

不思議なもので、空間のかたちというのは、人の振るまい方や関わり方、さらにはそこで起きる出来事さえも、ある程度方向づけていく。

店主の浜谷さんと客の関係性は、ただ無機質にモノとカネをやりとりするだけのものでは決してない。生活の中の知恵や楽しみを分かち合うやりとりなのだ。

初めて出会った客と客の間にも、自然と会話が始まって、温かい関わりが生まれていく。初対面なのに、懐かしい感じがするのはなぜだろう。

客の来店するタイミングが「重なる時は、会ってほしい人とか、会うべくして会う人とかの方が多い」と浜谷さんは言う。「重なる人はそこで何かが生まれるんです」

仕切りはあっても人をいたずらに分け隔てることのない、豊かさにあふれた空間では、ちょっとした奇跡のような偶然もよく起きる。

浜谷さんが仕事をする上で大切にしているのは笑顔だ。

店を訪れた人を笑顔で迎え、温もりにあふれたひとときを分かち合う。sumaoで笑顔になった人は、きっとどこかで別の誰かを笑顔にし、笑顔の輪が次々と連鎖して広がっていく。

浜谷さん自身、sumaoで育むさまざまな人との絆から、笑顔の輝きをさらに増している。

浜谷さんの笑顔は、共に暮らす家族の心をも明るく照らし、幸せな家族は、それぞれが生きる場所にまた笑顔の灯をともしていることだろう。

家庭と職場は全く別の理屈で動く世界だと考える人も多いだろうけれど、突き詰めるならば、どちらも人が人と関わる中で喜びや幸せを生み出す場所。一番大切なことは同じなのかもしれない。

笑顔を循環させる水源として、町家sumaoは京の街に息づいている。

すまいの雑貨店 sumao
京都市中京区岩上通蛸薬師下る宮本町803-1 ⇒地図
【アクセス】 阪急「大宮駅」から徒歩4分
京都市バス「四条堀川」から徒歩2分
【電話】 075-200-3219
【営業時間】 11:00~18:30
【定休日】 毎週日・月・火曜日(日曜日は時々営業)
【HP】 http://sumao.info/
【Facebook】 https://www.facebook.com/sumaokyoto/
【Instagram】 https://www.instagram.com/sumao_kyoto/

関連記事

  1. 【icingcookies TOBIRA】オーナーパティシエール…
  2. 【京こま匠 雀休】店主 中村佳之さん
  3. 【株式会社 庵町家ステイ】代表取締役社長 三浦充博さん

お問い合わせ

当サイトについてのお問い合わせは

こちらからお願いします。

PAGE TOP